2611話

今日も不安定なみたいなのでスク投下はこっちで続行です
[―]
  「はーいみんなー、準備は出来たかなー?」
  「「「「「はーい!」」」」」
エリオの声に5人の娘達が元気よく返事をする
既に夕暮れに差し掛かっており時間的に娘達は自宅にいる頃なのだが
今日だけは違う、夜遅くまで出歩いても許される日なのだ
 00「レンカも準備はいいな?」
  「うん♪」
アツェレイも妹のレンカと手を繋ぎながらエリオ達と共にいる
しかしエリオの娘達とレンカはいつもとは格好が違う
  「みんな浴衣が似合ってるね、可愛いよ」
そう、6人の少女達は皆浴衣を纏っていたのである
今日は夏祭りがある日
夏の締めくくりに相応しい行事と言えるだろう


エリオとお面と再会と<夏の終わりに出会う夜>


娘達やレンカはお祭りという事もあってとてもテンションが高い
今にも飛び出して行きそうな娘もいるくらいだから相当だ
  「みんなー、それぞれママと手を繋いで離れないようにねー?」
  「「「「「はーい!」」」」」
  「心配いらないぞエリオ、私達は必ず娘達から目を離さんからな」
と、自信に満ち溢れたトーレの発言
しっかりと娘のトーリの手を握っていてまさに頼れる母親だ
祭りともなるとかなりの人で溢れ返る場所
そうなると引率がエリオとアツェレイだけでは足りなかった
故に今日は娘達には母親が一緒に行動するのである
 00「エリオ、俺はレンカと一緒に回るから別行動になると思うぞ」
  「うん、僕は娘達とそれぞれ回っていくから」
 00「確かミライ執務官が後で合流するんだったか?」
ちなみに母親5人を除いて引率として同行できるのはミライだけ
フェイトはミライに凄まじい嫉妬のオーラを向けていたのは言うまでもない


その後、一同は祭りが開かれている場所に到着
途端にウェリオがウェンディの手を引いて駆け出して行った
  「ママー!早速食べるッスー!」
  「分かったッス!
   それじゃあエリオ!あたしちょっと行ってくるッス!(シュタッ!)」
エリオに向かって軽快にサムズアップを見せると2人は最初の屋台に向かっていく
  「やれやれ……ウェンディの方が楽しんでそうだな」
 00「いい意味でも悪い意味でも娘と思考が似通ってるんだな
   じゃあ俺もレンカと一緒に色々回ってくるわ」
  「うん、僕も(....ドンッ!)うわっ!?」
と、その時エリオは道行く人と肩がぶつかってしまった
人の数も多い為仕方がない事かもしれないが
  「あ、すみませんでした」
  「いえ、こちらこそ……失敬」
エリオはぶつかった人を見て驚いた、その人物は顔にお面を付けていたからだ


背丈はエリオやアツェレイと同じくらい
2人と違い浴衣を着ているのだがその顔には狐のお面を付けている
そのお面はとても精巧で一瞬本物かと思う程の出来栄えだった
お面を付けた人はそのまま頭を下げて人ごみの中へと消えていき……
  「今の人が付けてたお面……凄くリアルだったな……」
 00「…………」
  「(チョイチョイ)お兄ちゃん?どうしたの?」
レンカに手を引っ張れる感覚でアツェレイはハッとなる
 00「あ、いや……何でもないんだ
   ただ今のやつ……どこかで感じた様な流れでな」
  「じゃあ僕達の知ってる人かもしれないね」
アツェレイが流水で感じ取る流れは人に対しても存在する
DNAの様に1人1人異なる流れなのだが
アツェレイが感じ取ったのは以前も感じた事のある流れの様なのだ
 00「まぁ今日は祭りだしな」


 「参った参った、仕事片付けるのが長引いちゃったよ」
ミライは少し急ぎながら祭りの会場へとやってきた
引率者として皆と行動を共にするはずが予想以上に時間がかかったのである
 「えっと……まずエリオと合流して
  でも携帯に呼びかけてもでないな……気付いてないのかな」
祭りの会場ともなると携帯の着信音は周囲の音でかき消されてしまうだろう
エリオがマナーモードにし忘れていたら気付かないのも無理はない
 「ならストラーダに直接通信を送ってみて……場所を(ドンッ!)キャッ!?」
考え事をしながら歩いていたせいかミライは途中で人とぶつかってしまった
突然の事でバランスを崩し後ろに倒れかけたその時
 「(ガシッ!)大丈夫か?」
その手を取ったのはさっきエリオとぶつかったお面の人物であった
倒れる寸前のミライの手を握り締め手元へと引き寄せていく
 「あ、あの……ありがとう」
 「そそっかしい所は相変わらずだな」


 「え……?」
どこか意味深な発言を残し狐のお面を付けた人物はそのまま去っていく
 「今の……どこかで……」
ミライもまた今の人物についてどこか気になっていた
それもアツェレイが感じたもの以上に
その声もずっと聞いていた様な、決して忘れてはいけない様な
記憶の奥底に訴えかける声にミライはずっと考え込んでいた
 「…………ッ!?」
そしてある一つの答えが導き出された
これにはミライも驚愕してしまう
何しろそれはありえない答えだからだ
だが今の声は聞き間違えるはずがない、特にミライは
 「待って!(ダッ!)」
ミライは急いでお面の人物を追い掛ける
人ごみをかきわけ出来る限り急いで後を追った


 「ッ!お願い!待って!」
ようやくさっきの人物の後ろ姿を発見し大声で呼びかける
すると今まで歩いていた足を止めた
だが振り返る事はせずそのままミライに背を向けたままで
 「ハァ!ハァ!ハァ!ハァ!……あなた……あなたは……」
心臓の鼓動が早まっている、動揺しているのだろう
ミライの勘違いであればそれでいいのだ
一言謝罪してエリオに合流すればいい、だが勘違いでないのなら
 「あなた……リョウ……リョウなの?」
 「…………(クルッ)」
まるでミライの問いかけに答えるかの様に振り返る
その顔には相変わらず狐のお面を付けた人物が……改めて言葉を発した
 「やっぱり……相変わらずだな、ミライ」


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